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顎のずれは顔の歪みを生み、顔の歪みは身体全身の歪みを生みます。 ずれた顎の歯ではうまく噛めないことからもわかるように、安定した顎の位置は、全身のバランスに大きく関係しています。 ところで、皆さんは、安定した良い顎の位置がどのように決まっているかご存じでしょうか? 多くの方々は、上下の歯が噛み合う位置が、安定した顎の位置と思っているのですが、実はそうとも言えません。 そして、この歯が噛み合う位置と顎の位置のずれが、お口全体のバランスを崩し、知覚過敏、歯の揺れ、歯周病、虫歯、顎関節症などを引き起こし、また全身状態のバランスも崩れるために、偏頭痛、肩こりなどの原因になることがあります。 しかし、そもそも、顎の位置と噛み合わせの位置が違うというのは、どういうことなのでしょうか? 安定した顎の位置を、専門用語では中心位(ちゅうしんい)と呼びますが、上下の歯が噛み合う位置は、中心咬合位(ちゅうしんこうごうい)と呼び 、違う基準のものです。 中心位とは、お口を軽く閉じた状態で、顎の関節が最も自然な位置関係にあることです。 私達は、普段意識をしていませんが、上顎は頭蓋骨の一部ですので、動きません。ですから、顎の動きはすべて下顎の動きなのです。 そして、中心位とは歯の噛み合わせとは関係なく、 口を開け閉めする筋肉が引っ張られていたり、縮んだりしていないリラックスした状態での顎の関節の位置のことなのです。 中心位を顎の関節の内部の状態で表すと、下顎頭と呼ばれる部分が、関節円板というクッションの役割を果たす組織を介して 、下顎窩と呼ばれる上顎のくぼみの自然な位置に収まる状態を言います。 しかし、中心位は専門的な検査をしないと位置が特定出来ないため、一般の方々がどのような状態なのか理解するのは難しいと思います。 ですので、ここでは 正しい噛み合わせの位置は、中心位を基準にして決まる とだけ理解しておいてください。 中心咬合位とは、上下の歯が当たる面積が最大になる位置のことですが、簡単に言うとしっかり噛んだ状態のことです。 筋肉の状態と顎の関節の状態によって位置が決まる中心位とは違い、中心咬合位は、あくまで歯の噛み合わせ関係のみで決まる顎の位置です。 つまり、歯並びが悪かったり、歯周病や虫歯で、噛み合わせ関係のバランスが崩れている場合でも、その状態で噛んだ位置が中心咬合位になります。 ですので、ここでは 正しい噛み合わせの位置は、必ずしもしっかり噛んでいる状態ではない と理解しておいてください。 中心位と中心咬合位は、健康な方の場合には、概ね一致します。 ですので、一般の方々はもちろん意識はしていませんし、歯科医師も意識しないで治療している場合が多いのですが、実は歯科医院へ虫歯や歯周病などで受診する方の多くが、この中心位と中心咬合位の位置がずれている場合が少なくありません。 というのも、そもそもこの中心位と中心咬合位のずれ自体が、お口のバランスを崩して、虫歯や歯周病の原因を作っている場合が少なくないからです。 例えば、顎の位置(中心位)と歯が噛み合う位置(中心咬合位)が同じ場合には、噛んだ時に全体の歯がほぼ同時に当たり、すべての歯に噛み合わせの力がバランス良く掛るので、個々の歯への負担は最小限になります。 ところが、顎の位置(中心位)と歯が噛み合う位置(中心咬合位)がずれている場合には、噛んだ時にまず最初に一部分の歯が当たってから、顎全体が動いて全体の歯が当たります。 ですから、最初に当たる歯には顎全体の噛み合わせの力が掛ることになり、これによって歯や歯茎が咬合性外傷という状態になって知覚過敏、歯の揺れ、歯周病、虫歯の原因になることがあります。 また、顎の位置(中心位)と歯が噛み合う位置(中心咬合位)がずれている場合には、食事をしている間や、くいしばり時などの歯が当たっている間は、常に噛む筋肉のバランスが崩れて、緊張状態になり、全身状態のバランスも崩れるため、顎関節症や偏頭痛、肩こりなどの原因になることがあります。 左の顎が痛いとのことで、いらした方です。 正面から見ると、しっかり噛み合った位置(中心咬合位)で、上下の前歯の中心がずれていて、下顎が向かって左にずれているようでした。 また、この方は肩こりと偏頭痛にもずっと悩まされてきたとのことでした。 そこで、まず顎の正しい位置を診査するために中心位を測定する精密検査を行うことにしました。 安定した良い顎の位置/中心位治療前 中心位を測定してみたところ、やはり噛んだ状態での中心咬合位と顎の正しい位置の中心位では、大きな差がありました。 そして、そのずれによって顎の関節の位置もずれ、痛みを伴う顎関節症の症状が出ているようでした。 また、食事をするたびに噛む筋肉が緊張するので、それによって体のバランスも崩れて、偏頭痛や肩こりが起こっているようでした。 そこで、前歯の糸切り歯にセラミックべニアを行い、いくつかの奥歯にジルコニアオールセラミッククラウンの被せ物をして、中心咬合位と中心位を同じになるように、噛み合わせを作り治しました。 右の写真では、治療前の写真と比べて歯石がなくなっているのですが、上下の前歯の中心が合っているのがわかると思います。 これにより、顎の位置が正しくなったため、顎関節症の症状もなくなり、筋肉の緊張が取れたため、偏頭痛や肩こりも解消しました。 また、歯周病もあったため、パーフェクトペリオ歯周病治療を行って歯茎も良い状態になりました。 |
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