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皆さんは 、歯科医院へ行って歯を抜かれた(抜歯)ことはありますか?『この歯はもう寿命ですね。残念ですが、抜きましょう。』 歯医者に行って抜歯された経験のある方なら、このせりふは聞いたことがあると思います。でも疑問に思った方はいませんでしたか?本当にこの歯は 抜歯しなければだめなのか?現代医学でなんとかならないのかと? 抜歯になる原因は、多々ありますが、なんでも抜いて済ませていた10数年前に比べて、現在は一本でも多く自分の歯を残しましょうという方向に歯科の技術は進んでいます。そしてその方法も近年いろいろ開発されてきました。 歯を出来るだけ残して自分の歯で食べ物を噛みましょう。と厚生労働省は10数年前に80-20運動というスローガンを立ち上げました(80歳で20本の歯を残そうというスローガンです。) しかし統計によれば、現在80歳の方の平均残存歯数は8.2本です。 この10数年で平均寿命はずいぶん延びましたが、歯の寿命はほとんど延びておらず、調査によれば平均60歳でほぼ半分の歯を失う結果になっています。 抜歯になる原因は多々ありますが、大別すると下記の6つの場合がほとんどを占めます(矯正のための便宜抜歯は除きます)。 そして、その抜歯になる原因に合わせて、それぞれ抜歯しない治療法が種々存在します。 一般的に使われる歯槽膿漏または歯周病という言葉は、歯茎の病気の総称で、軽度なものから重度なものすべてを含んだ意味で使われています。 抜歯の対象になるのは、このうち中等度から重度のものですが、原因の除去や歯の固定、骨の再生治療(エムドゲイン)などで、 このうちの何割かの歯が抜かなくてすむようになってきました。 また歯槽膿漏、歯周病で歯が揺れて、抜歯以外の選択肢がない場合でも、ウイングロックという固定金具で揺れている歯と揺れていない歯を繋ぐと、抜歯しないで治療できる場合もあります。 虫歯も見下してはいけません。虫歯を放置し、歯茎の上に出ている部分(歯冠と呼びます)がすべて崩れてしまうこともあるのです。 歯の根(歯根)の方まで虫歯がすすみ、歯茎が覆いかぶさった状態になってしまうと、今までは、抜歯の対象になっていましたが、現在は条件が揃えば、歯根を矯正力で歯茎の下から引っ張り出したり(エクストルージョン)、歯冠延長術(クラウンレングスニング)という治療法で、相当数な歯が抜歯しなくてすむようになってきました。 一度神経を抜いた歯で、根の先に病気が出来てしまうことがあります。膿がたまるので、急性症状が出ると痛みが出ますが、普段はあまり痛みません。 急性症状が出て、痛いときによく抜歯されてしまうのですが、根の再治療がうまくいけば、抜歯しないですむ場合も多々あります。 噛み合わせが何らかの原因によってバランスが崩れると、ある特定の歯に大きな力が加わるようになります。 これを咬合性外傷といい、放置すると歯が欠けたり、歯の揺れが見られるようになります。 これもお口全体のバランスを治すことによって、抜歯を回避出来る場合があります。 歯によっては、構造上割れやすい歯が存在します。 歯根の先まで真っ二つに割れてしまったものはどうしようもありませんが、CTスキャンでのレントゲン診査を行い、割れ方や割れた範囲などによって、ファイバー樹脂でできた土台による接着や、歯冠延長術(クラウンレングスニング)で抜歯しないですむ歯もあります。 親知らずは、抜かなければならないと思っている方も多いと思いますが、生え方によっては抜歯しないほうが良い場合もあります。 今まで統計学の分野では、歯の残っている本数とその人の平均寿命を調べた研究がいくつもあります。 そして、そのすべての研究で、歯が残っている数が多い人の方が平均寿命が長いという結果が出ています。 その結果からも、健康で長生きするためには、歯を出来るだけ残す必要があるという事がわかります。 もちろん抜歯しなければならない歯もあります。 ●歯根の周りの歯を支える歯槽骨が完全に吸収(無くなっている)しているか、ほとんど残っていない場合。 ●歯根が根元まで完全に割れてしまっている場合。 ●その他、いろいろな治療を施しても、長期的に安定した予後が期待出来ない場合。 |
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